
森田春代画「月華」(小野小町)
上にあるのは、森田春代さんの描いた小野小町です。
森田春代さんは、海外で活躍されている日本画家で、きもの美人を描いた豪華絢爛な作風は、いまや世界中で大人気なのだそうです。
絵に筆字で歌が書かれています。
うつつには さもこそあらめ
夢にさへ 人めをもると 見るがわびしさ
小野小町の歌です。
森田春代さんは、この絵に、この歌を配置されました。
絵には背景にまっすぐな竹が配置され、遠目に高貴なお方を象徴するような欄干が描かれています。
願いが叶うと呼ばれている満月、そして月夜の晩です。
よく考えられた、歌にとてもマッチした絵だと思います。
けれど、一般にはこの歌は「夢の中でまで人目を避けて逢うなんて、なんてさみしいことでしょう」と嘆いているとか、あるいは「現実でも夢の中でも人目を避けなければ逢えない寂しさ」を詠んだ歌だとかと解釈されています。
嘆きや寂しさを詠んだ歌だといのです。
この美しい絵と、嘆きや寂しさでは、なんだかそぐわないような感じがします。
ところが歌を音読してみるとわかりますが、この歌からは嘆きや哀切感は感じられません。
むしろ透明感や可憐さや美しさを、ことばから感じます。
まさに絵のイメージとぴったりの感じを、歌そのものから私達は感じ取ることができます。
そして、だからこそこの歌は千年の時を超えて人々から愛され続けているのだと思います。
では、歌の本当の意味は、どのような意味なのでしょうか。
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日頃からお慕いしていた男性です。
でも、本当にそんな男性が目の前に現れたら、きっと私はあまりの嬉しさに顔をあげてその男性のお顔を見ることさえできないでしょうと詠んでいます。
夢の中でさえも、顔をあげて正面から見ることができない相手なのです。
そんな人とリアルで会ったら、それこそ真っ赤になってうつむくばかりで、声も出せない。見ることもできない。
だからこそ、そんな自分を「わびしさに」と詠んでいるのではないでしょうか。
冒頭の一般の解釈では、人目を避けてリアルに逢う、もしくはリアルに逢えない寂しさを詠んだとしています。
けれど、私にはそのような歌にはどうしても思えないのです。
むしろこの歌は、大好きな人だけど、夢の中でさえ想いがつのって恥ずかしくて顔をあげてその人の姿やお顔を見ることさえできないでいるのに、リアルに逢ったら、それこそ、どうしましょう、どうしたらいいの?となってしまう。
そんな高ぶる感情を詠んだ歌に思えるのです。
うつつには 現実には
さもこそあらめ さすがにそうなってしまいますわ
夢にさへ 夢の中でさえ
人めをもると 人目を避けて
見るがわびしさ 顔を上げて見ることもできない、そんなわびしさ
夢にまで見た憧れの君です。
夢の中でさえ、恥ずかしくって、
正面からお顔をみることさえできないのに、
現実にお逢いするなんて、
あまりにも恥ずかしすぎてお顔さえ見れない。
それでとってもわびしくてもったいないことですのに。
そんなニュアンスの歌なのではないでしょうか。
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私は、こちらの和歌の解説で
小町の境遇が少しわかったような気がします。
小町のもとに、忍び込んできたやんごとなき方。
きっと小町が大好きな方だったのでしょう。
「やんごとなき方」だし、人目をしのばなければいけない方だったのですね。。
気軽に逢うことは、叶わない。
だけど、小町はこの方のことがいつも頭から離れず、せめて夢の中でお逢いしたいのだけど、夢の中ですら大好き過ぎて、お顔を見るとこさえ恥ずかしい。
絶世の美女だけど、浮いた恋はできない一途な方だったのでしょうね。
そして、そういう手の届かない恋ではなく
その後、文屋康秀さんとの堅実な愛を受け入れて
「あなたについていきます!」
わびぬれば 身を浮草の 根を絶えて
誘う水あらば いなむとぞ思ふ
だけど、康秀さんには
おいてけぼりにされてしまいました。
憧れた大好きな方との恋、幼馴染で心を許していた方との堅実な恋、
この二つとも、女性としての平凡な幸せを手に入れることは叶いませんでした。
古事記からもわかるように昔の人の方が、愛、性に物凄く真剣だったように感じます。
なぜなら、特に女性は
花の時間はあっという間でしたから。
30歳になれば、年増(⌒-⌒; )
。。
それを考えると、和泉式部は類稀なる色気と美貌とご縁もお持ちの方だったのでしょうね〜。
30歳を過ぎてから、四人目の方と結婚までされて、そして子どもまで産まれたのですから驚異です!(◎_◎;)
アンチエイジングが発達していなかった平安の女性は、その短い花の間に
凝縮した愛を生きたし、その後は、その愛の時代を愛おしみながら暮らしたのではないかと思います。
《小町の恋歌》
思ひつつ寝ればや人の見えつらむゆめとしりせばさめざらましを
うたたねに恋しき人を見てしより夢てふものはたのみそめてき
いとせめて恋しき時はむば玉のよるの衣を返してぞきる
おろかなる涙ぞ袖に玉はなす我はせきあへずたぎつ瀬なれば
秋の夜も名のみなりけりあふといへば事ぞともなくあけぬるものを
うつつにはさもこそあらめ夢にさへ人目をよくと見るがわびしさ
限りなき思ひのままに夜もこむ夢路をさへに人はとがめじ
夢路にはあしもやすめず通へどもうつつに一目見しごとはあらず
絶世の美女だった小町さんは、つれない女性だったと紹介されていることがあります。
恋してお慕いする方以外には見向きもせず、二度も悲しい失恋をされても乙女のままの心を失わなかった、素敵な女性だったのです。
ますます小町ファンになってしまいました

ameblo.jp/inukayh777/entry-12052823758.html
美しかったスーパームーン。
小町さんにプレゼントします(^_^)v